Snap Shot 24-1

徹夜で東名神を走り、やっとのことで、横浜みなとみらいにある横浜美術館で開催中の、「中平卓馬/原点復帰ー横浜」を見てきました。
途中、よくしゃべる猫やミュージシャンを名乗る「日本独自の良さを発見するためにお寺巡りをしている」というヒッチハイカーに出会ったり、帰りには、国道1号と16号を勘違いして、鎌倉から小田原を経由したり、濃い内容の24時間でした。
みなとみらいの地下駐車場に車を置いて出てくると、「来るべき言葉のために」に出て来そうな、霧の高層ビルと工事現場の風景がありました。時おり陽は射すけれども小雨もぱらつく埋立て地は、なかなか凝った建築物があります。が、その撮影には、ピーカンの直射日光が必要だったでしょう。
さて、中平卓馬。
入ってすぐは、最近作のカラー。何と風通しの良い写真でしょう!
写真評論家の某氏は、「無人カメラの画像」などと言ったようですが、これほどまでに心地よい無人カメラの画像を見たことはありません。ピカソの絵と子供の落書き以上の違いがあります。
予想外で驚いたのが、「新たなる凝視」シリーズが中心となるフェロタイプのあたったプリント約600余点の群写真の展示。印画紙のカールするに任せた、上隅のみピン留めした展示には、思わずにんまりしたあと、すっかり引き込まれました。
ほとんどの新聞や雑誌の紹介記事に「約800点の写真」という記載がありましたが、こういう形での展示があるとは想像していなかったので、寄ったり退いたり出たり入ったり、かなりの時間をかけ、どっぷりと中平の撮影行為に浸りました。
時代を遡る形式の展示は、断絶する中平自身の「記憶」を追体験するための最善の方法なのかも知れません。
展示を見ている背後から、ふいに中平が昨日の収穫をピン留めしに来るのではないかと、少し期待していましたが(^_^)
そして何よりも、中平卓馬がより徹底した『植物図鑑』を撮り続けているという確信を、さらに強くしました。

2003.11.09