Snap Shot 27

アサヒカメラ12月号の「写真展を歩く36」で横浜美術館の「原点復帰ー横浜/中平卓馬」が取り上げられています。
飯沢耕太郎氏の評論はいつもながら、奥深く切り込むことのない、まるで100円アイス用のサジで砂場を掘っているような感じです。ただ、「この初期作品と現在の仕事とを、断絶ではなく連続としてとらえる視点も、これからは必要になってくるだろう」と、こういうメディアで述べていることに対しては、いちおうの敬意を表したいと思います。

実は、この12月号に素晴らしい写真を見つけました。それも、「月例コンテスト」でです。
モノクロプリントの部1位、加藤和弘さんの「好日」というタイトルの四角い石油缶(18リットル)の山の裾に猫がいる写真です。石油缶の山だけでも素晴らしい題材ですが、その猫がまた最高です。こういう光景に出会うこともあるのですねー。この猫が画面の中央ではないことが、さらに見るものの驚きを倍加させているのでしょう。
この1枚の写真からドラマやストーリーを組み立てる人もいるかも知れませんが、そんなことよりも、個々の物体の存在の煌めきが圧倒的な力で押し寄せてくるような迫力を感じ、思わず写真の力を信じたくなりました。タイトルだけが、月例的意味不明です。
アマチュア作家のコンテストには、しばしば素晴らしい作品がありますが、たいていは意味不明・ありきたり・想像を限定してしまうようなタイトルがついていて、タイトルを見た瞬間に興醒めしてしまうようなことが頻繁に起こります。かといって、意味もなく「無題」とか「習作」というタイトルでは困りますけどね。

_2003.11.20