視的生活
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大丸ミュージアム梅田で『藤原新也の聖地』を見ました。
ほとんどの写真は、すでに写真集や雑誌で見たことがあるものですが、サイズやプリントが変わったこともあり、おおむね新鮮な感覚で見ることができました。
藤原新也というとどちらかと言えばインドやチベット、トルコなどのアジア、或いは、シルクロードの写真の方が「有名」なのでしょうが、私は彼の『少年の港』が一番気に入っています。忘れていましたが、写真集も手元にあります(笑)
会場で販売されていた図録には、「それは時に、密かに転向と言われた」とありますが、珍しくモノクロで撮られた北九州は、彼にとっては、舞い戻らねばならない、それこそ「聖地」だったのだと思います。そこに在るほの暖かい空気が、私には快感となるのだと思います。
80年前後、その頃もっとも親しかった友人達は、松岡正剛やライアル・ワトソンと共に、『全東洋街道』にはまっていました。私も、今でも時々『逍遥游記』や『メメント・モリ』を引っぱり出しています。
「内」でもなく「外」でもなく、聖俗を溶解し、対立することなく心象風景に堕することなく、孤高に尖ることもなく、中空に浮遊するかのように存在するのが藤原新也の聖地なのでしょうか。
森山大道、荒木経惟と共に、常に見続け、考え続けたい写真であり思想です。

_2004.3.9