視的生活
-052-
祇園

豊南町

小曽根

母親の居宅から数百枚のキャビネ判プリントが出てきた。
手元にないことにも気がつかないでいた写真群だが、そのほとんどについて、いつどこで撮ったか、その時の暑さと日射しを即座に思い出した。1977年、夏。
埋もれていた記録と記憶は、意外と強い。
そのころは、トライXとD76での超微粒子現像に入れ込んでいた。
1:2または3の希釈で「2号印画紙に焼ける」極薄ネガ作りが目標だった。
その目標をほぼ達成できていた頃のプリントなのだが、さて、ネガはいったいどこにあるのだろう。
25年以上前のモノクロ・プリントは、ほぼ総てフェロがあたっており、久しぶりに見る光沢だけで感動してしまう。そのシャープネスやコントラストを見て、デジタルでも同じ「見てくれ」が作れるかどうか、やや自信がなくなってしまう。プリントの耐候性以外にも、デジタル・フォトがクリアすべき部分は確実に存在する。それまでは、内容で勝負(笑)!
WEB公開用ではなく、オリジナル・プリントとしてインクジェットで出力する時、このフェロタイプ・プリントをスタンダードとして、この諧調とシャープネスに並ぶことが叶わないならば、銀塩に戻ることが必然になるかも知れない。

_2004.4.1